class Monitor

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要約

スレッドの同期機構としてのモニター機能を提供するクラスです。また同じスレッドから何度も lock できる Mutex としての機能も提供します。

MonitorMixin を include し、いくつかの別名を定義したクラスです。

消費者、生産者問題の例

require 'monitor'

buf = []
mon = Monitor.new
empty_cond = mon.new_cond

# consumer
Thread.start do
  loop do
    mon.synchronize do
      empty_cond.wait_while { buf.empty? }
      print buf.shift
    end
  end
end

# producer
while line = ARGF.gets
  mon.synchronize do
    buf.push(line)
    empty_cond.signal
  end
end

2回ロックしてもデッドロックにならない例です。

デッドロックにならない例

require 'monitor'
mon = Monitor.new
mon.synchronize {
  mon.synchronize {
  }
}

Thread::Mutex ではデッドロックになります。

Mutex でデッドロックになる例

mx = Mutex.new
mx.synchronize {
  mx.synchronize {
  }
}
# => deadlock; recursive locking (ThreadError)

目次

特異メソッド
インスタンスメソッド

特異メソッド

new -> Monitor[permalink][rdoc][edit]

新しい Monitor オブジェクトを生成します。

インスタンスメソッド

enter -> ()[permalink][rdoc][edit]
mon_enter -> ()

モニターをロックします。

一度に一つのスレッドだけがモニターをロックできます。既にモニターがロックされている場合は、ロックが開放されるまでそのスレッドは待ちます。

Thread::Mutex#lock に相当します。 Thread::Mutex#lock と違うのは現在のモニターの所有者が現在実行されているスレッドである場合、何度でもロックできる点です。ロックした回数だけ Monitor#exit を呼ばなければモニターは解放されません。



require 'monitor'
mon = Monitor.new
mon.enter
mon.enter

Thread::Mutex#lock ではデッドロックが起きます。

Mutex でデッドロックする例

m = Mutex.new
m.lock
m.lock # => deadlock; recursive locking (ThreadError)
exit -> ()[permalink][rdoc][edit]
mon_exit -> ()

モニターのロックを解放します。

enter でロックした回数だけ exit を呼ばなければモニターは解放されません。

モニターが解放されればモニターのロック待ちになっていたスレッドが一つ実行を再開します。

[EXCEPTION] ThreadError:
ロックを持っていないスレッドが呼びだした場合に発生します


require 'monitor'
mon = Monitor.new
mon.enter
mon.enter
mon.exit
mon.exit
mon.exit # => current thread not owner (ThreadError)
mon_check_owner -> nil[permalink][rdoc][edit]

MonitorMixin 用の内部メソッドです。

[EXCEPTION] ThreadError:
ロックを持っていないスレッドが呼びだした場合に発生します
mon_locked? -> bool[permalink][rdoc][edit]

モニターがロックされているときに true を返します。

mon_owned? -> bool[permalink][rdoc][edit]

カレントスレッドがモニターをロックしているときに true を返します。

synchronize { ... } -> object[permalink][rdoc][edit]
mon_synchronize { ... } -> object

モニターをロックし、ブロックを実行します。実行後に必ずモニターのロックを解放します。

ブロックの評価値を返り値として返します。

[SEE_ALSO] Monitor#enter

try_enter -> bool[permalink][rdoc][edit]
try_mon_enter -> bool
mon_try_enter -> bool

モニターのロックを取得しようと試みます。ロックに成功した(ロックが開放状態だった、もしくはロックを取得していたスレッドが自分自身であった)場合には真を返します。

ロックができなかった場合は偽を返し、実行を継続します。この場合にはスレッドはブロックしません。

new_cond -> MonitorMixin::ConditionVariable[permalink][rdoc][edit]

モニターに関連付けられた、新しい MonitorMixin::ConditionVariable を生成して返します。

wait_for_cond(cond, timeout) -> true[permalink][rdoc][edit]

MonitorMixin::ConditionVariable 用の内部メソッドです。

[PARAM] cond:
Thread::ConditionVariable を指定します。
[PARAM] timeout:
タイムアウトまでの秒数。指定しなかった場合はタイムアウトしません。
[RETURN]
Ruby 1.9 の頃からのバグで常に true を返します。([bug#16608])


require 'monitor'
m = Monitor.new
cv = Thread::ConditionVariable.new
m.enter
m.wait_for_cond(cv, 1)