スレッドの同期機構としてのモニター機能を提供するモジュールです。
クラスに Module#include したり、オブジェクトに Object#extend したりすることでそのクラス/オブジェクトにモニタ機能を追加します。
消費者、生産者問題の例
require 'monitor' buf = [] buf.extend(MonitorMixin) # 配列にモニタ機能を追加 empty_cond = buf.new_cond # 配列が空であるかないかを通知する条件変数 # consumer Thread.start do loop do buf.synchronize do # ロックする empty_cond.wait_while { buf.empty? } # 配列が空である間はロックを開放して待つ print buf.shift # 配列が空でなくなった後ロックを取得してこの行を実行 end # ロックを開放 end end # producer while line = ARGF.gets buf.synchronize do # ロックする buf.push(line) # 配列を変更(追加) empty_cond.signal # 配列に要素が追加されたことを条件変数を通して通知 end # ここでロックを開放 end
MonitorMixin は初期化される必要があります。上の例のように Object#extend を使って利用する場合は自動的に初期化されます。
require 'monitor' buf = [] buf.extend(MonitorMixin)
しかし、MonitorMixin をクラス定義の際に Module#include を使って利用する場合は、initialize メソッドで super() か super を呼んで、初期化する必要があります。スーパークラスの initialize に引数を渡したい場合は super を、そうでない場合は super() を呼んで下さい。詳しくは、メソッド呼び出し(super・ブロック付き・yield)/super を参照して下さい。例えば、以下の MyObject のスーパークラスは Object であり、その initialize は引数を受け付けないので super ではなく super() を呼ぶ必要があります。
require 'monitor' class MyObject include MonitorMixin def initialize(val) super() @value = val end def to_s synchronize { @value.to_s } end end
以下も参考になります。
mon_enter -> ()
[permalink][rdoc]モニターをロックします。
一度に一つのスレッドだけがモニターをロックできます。既にモニターがロックされている場合は、ロックが開放されるまでそのスレッドは待ちます。
Thread::Mutex#lock に相当します。 Mutex#lock と違うのは現在のモニターの所有者が現在実行されているスレッドである場合、何度でもロックできる点です。ロックした回数だけ mon_exit を呼ばなければモニターは解放されません。
例:
require 'monitor' buf = [] buf.extend(MonitorMixin) buf.mon_enter buf.mon_enter
Mutex#lock ではデッドロックが起きます。
例:
require 'thread' m = Mutex.new m.lock m.lock # => deadlock; recursive locking (ThreadError)
mon_exit -> ()
[permalink][rdoc]モニターのロックを解放します。
mon_enter でロックした回数だけ mon_exit を呼ばなければモニターは解放されません。
モニターが解放されればモニターのロック待ちになっていたスレッドが一つ実行を再開します。
mon_synchronize { ... } -> object
[permalink][rdoc]synchronize { ... } -> object
モニターをロックし、ブロックを実行します。実行後に必ずモニターのロックを解放します。
ブロックの評価値を返り値として返します。
[SEE_ALSO] MonitorMixin#mon_enter
mon_try_enter -> bool
[permalink][rdoc]try_mon_enter -> bool
モニターのロックを取得しようと試みます。ロックに成功した(ロックが開放状態だった、もしくはロックを取得していたスレッドが自分自身であった)場合には真を返します。
ロックができなかった場合は偽を返し、実行を継続します。この場合にはスレッドはブロックしません。
new_cond -> MonitorMixin::ConditionVariable
[permalink][rdoc]モニタに関連付けられた、新しい MonitorMixin::ConditionVariable を生成して返します。