Ruby 1.9.3 リファレンスマニュアル > ライブラリ一覧 > dlライブラリ

library dl

要約

*.dllや*.soなど、ダイナミックリンクライブラリを扱うためのライブラリです。

注意

このライブラリは 2.2.0 で削除されました。2.2.0 以降では fiddle を利用してください。

使い方

通常は dl/import ライブラリを require して DL::Importer モジュールを使用します。 DL モジュール自体はプリミティブな機能しか提供していません。 DL::Importer モジュールは以下のようにユーザが定義したモジュールを拡張する形で使います。

require "dl/import"
module M
  extend DL::Importer
end

以後、このモジュールで dlload や extern などのメソッドが使用できるようになります。 以下のように dlload を使ってライブラリをロードし、 使用したいライブラリ関数に対して extern メソッドを呼んで ラッパーメソッドを定義します。

require "dl/import"
module M
  extend DL::Importer
  dlload "libc.so.6","libm.so.6"
  extern "int strlen(char*)"
end
# Note that we should not include the module M from some reason.

p M.strlen('abc') #=> 3

M.strlen を使用することで、ライブラリ関数 strlen() を使用できます。

構造体を扱う

構造体も扱うことができます。たとえば gettimeofday(2) を使って現在時刻を得たい場合は以下のとおりです。

require 'dl/import'
module M
  extend DL::Importer
  dlload "libc.so.6"
  extern('int gettimeofday(void *, void *)')
  Timeval = struct( ["long tv_sec",
                     "long tv_usec"])
end

timeval = M::Timeval.malloc
e = M.gettimeofday(timeval, nil)

if e == 0
 p timeval.tv_sec #=> 1173519547
end

上の例で、メモリの割り当てに M::Timeval.new ではなく M::Timeval.malloc を使用していることに注意してください。

コールバック

以下のようにモジュール関数 bind を使用したコールバックを定義できます。

require 'dl/import'
module M
  extend DL::Importer
  dlload "libc.so.6"
  QsortCallbackWithoutBlock = bind("void *qsort_callback(void*, void*)", :temp)
  QsortCallback             = bind("void *qsort_callback2(void*,void*)"){|ptr1,ptr2| ptr1[0] <=> ptr2[0]}
  extern 'void qsort(void *, int, int, void *)'
end

buff = "3465721"
M.qsort(buff, buff.size, 1, M::QsortCallback)
p buff #=>   "1234567"

M.qsort(buff, buff.size, 1, M::QsortCallbackWithoutBlock){|ptr1,ptr2| ptr2[0] <=> ptr1[0]}
p buff #=>   "7654321"

ここで M::QsortCallback はブロックを呼ぶ DL::Function オブジェクトです。

ポインタを扱う

引数としてポインタを受け取る関数に対しては、ポインタの変わりに 文字列を渡します。文字列はポインタが指すメモリ領域として扱われます。

require 'dl/import'

module M
  extend DL::Importer
  dlload 'libc.so.6'
  extern 'void * memmove(void *, void *, unsigned long)'
end

s = 'xxxyyyzzz'
M.memmove(s, 'abc', 3)
p s                    #=> "abcyyyzzz"

char * 以外の型のポインタを受け取る関数に対しても文字列を渡します。

module M
  extend DL::Importer
  dlload 'libm.so.6'
  extern 'double modf(double, double *)'
end

s = ' ' * 8
p M2.modf(1.25, s)  #=> 0.25
p s.unpack('d')[0]  #=> 1.0

関数の引数と返り値

dl でインポートした C の関数を呼び出すとき、 その引数と返り値はインポートする際に指定した型と Ruby のオブジェクトの種類によって変換されます。

引数の変換は以下の通りです。

void* (つまり任意のポインタ型)

nil ならば C の NULL に変換されます DL::CPtr は保持している C ポインタに変換されます。 適当に変換してから、C のポインタに変換します。 文字列であればその先頭ポインタになります。 IO オブジェクトであれば FILE* が渡されます。 整数であればそれがアドレスとみなされます。 どれでもなければ to_ptr を呼び出し DL::CPtr オブジェクトに 変換したのが用いられます。

(unsigned) char/short/int/long/long long

Ruby の整数を C の整数に変換します。

double/float

Ruby の整数 or 浮動小数点数を C の浮動小数点数に変換します

返り値の変換は以下の通りです。

void

nil を返します

(unsigned) char/short/int/long/long long

C の整数を Ruby の整数に変換します

void*(つまり任意のポインタ型)

C のポインタを保持した DL::CPtr を返します。

fiddle との関係

fiddle が利用可能な環境では、DL 内部的に fiddle を利用し、 関数呼び出しを実現します。DL 単体では例えば x86_64 のような環境では 正しく動作しませんが、fiddle によってうまく動きます。

クラス

DL::CFunc

ダイナミックライブラリの関数を表すクラスです。通常、このクラスを直接使わずに ラッパークラスである DL::Function を使います。

DL::CPtr

メモリ領域を表すクラスです。C 言語のポインタに相当します。

DL::Handle

オープンされたダイナミックライブラリを表すクラスです。 dlopen(3) が返すハンドラーのラッパーです。

モジュール

DL

UNIX の dlopen(3) や Windows の LoadLibrary() などのダイナミックリンカへの低レベルなインターフェースを提供するモジュールです。

例外クラス

DL::DLError

DL のエラー全般を表すクラス。

DL::DLTypeError

DL の型変換エラーを表すクラス。

サブライブラリ

dl/import

dl ライブラリのための高レベルインターフェースを提供するライブラリです。

dl/types

C の型の別名を定義するライブラリです。